【いのちてんでんこTheMOVIE特集⑦】〜インタビューvol.1〜 振付家:小山柚香 Part2

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いのちてんでんこTheMOVIE制作に関わった方々のインタビューシリーズ、振付家・小山柚香編。
今回は、踊りの作り方・東北の郷土芸能との向き合い方について伺いました。
前回の記事はこちらからご覧いただけます。あわせて御覧ください。(青)

Part1 https://minnanos.com/2022/02/15/themovie10-1/


― 映画になり様々な表現の方法も変わることで、作品としての深みが出てきたのだと思いますが、郷土芸能というものがいのちてんでんこにとって深くなってきていると感じています。
今回、田束念仏鎧剣舞(たつがねねんぶつよろいけんばい:陸前高田市小友町をを拠点として活動)に実際、舞を習いに行く機会にめぐまれましたが、郷土芸能の要素が深く入ってきていることについて考えていることはあるのでしょうか?

小山:郷土芸能……(しばし考え込む)
私がいのちてんでんこに入った時点では(話中に出てくる芸能は)鹿踊り(※1)だったんですよ。で、今は剣舞(※2)に移り変わっていて。移り変わりにも、まあ、いろんな理由があるんですけど。その移り変わりの中で、振付にどう落としこむかみたいなことを考えていて。
剣舞の要素と鹿踊りの要素は、やっぱり別の違う郷土芸能なんだけど、どういうふうに振付に落とし込んでいったらいいかというのを、結構ずっと悩みつづけてはきたんですが。
わたしも二つの芸能を全然やったことがない状態だったので、それをいきなりこの距離のある東京の地で、勝手にそんな料理をしていいのだろうか?と笑。
しかもね、両方ミックスするのも絶対失礼だろうしな、と思っていました。
鹿踊りは東京にもあって、教わったこともあるんですけど、ちゃんと習得したわけでもないのに、どうすればいいんだっていうのは、結構悩んだ時期がありまして。
でもそれを経て、あと、色んな郷土芸能に触れるようになって、今最近考えているのは、郷土芸能の振付や型そのものを一番見せたいわけではなくて。作品として何を踊りで見せたいかというと、やっぱり、お祭りとか、郷土芸能が持つ空気感だったりとか、人と人とのつながり、みんなが何か一つの事を信じて何かを祈って踊りっていうことが一番核であって、どの踊りをどう踊るっていうのは、それ自体の目的じゃなくていいのではないか、っていうのを思ってから、あまり恐れなくなったというか。
身体性はもちろんあるんですけど、このステップがすごいとか、剣舞だったらずっと腰を落として足を踏んでいくのがすごいとかあるんですけど、実際やってみないとそ大変さってわかんないじゃないですか。
舞台上の剣舞チームの踊りをみても、カッコイイんだけど、実際に踊りの何が大変なのかわかんなかったりとか。
鹿踊も太鼓を実際につけてみないと、太鼓を持って踊る大変さとか(前が)見えないとか、そういうことってわかんないから。(その大変さが)お客さんに伝わる必要はなくて。

2018年3月鎌倉芸文館での、鹿踊りとの共演の様子。


小山:東京にいるダンサーって、身体が効くから、型としてはもしかしたらできちゃうのかもしれないけど、だからそこを目指してしまうと、それで終わっちゃうなっていうのもあって。
日本のコンテンポラリーダンサーは、洋舞・バレエ出身の人が多いから、郷土芸能の振付ってかなり身体に負担がかかるんですよ。
かなりチャレンジングだと思うんですけど、今まで自分が持っている身体言語じゃないものに挑戦して、グググってなっている身体って、かなりいいなと思っていて。それを舞台に乗せ続けることで、みんなが一つのものに向かってもがいているというか、挑戦し続けている空気感が見えてくるんじゃないかなと、信じて今やっていますね。
なので、郷土芸能の振付だけではなくて、色んなシーンで、動くコンテンポラリーな振付のシーンであっても、一人一人の体に負荷をかける振付というか。さらってこなせる「わー綺麗」っていう動きは、結果あまりなくて。割とチャレンジし続けられるような振付にしているんですけど。結構それが郷土芸能をコンテンポラリーダンスとして振付をする上での、自分のこだわりですね。

― コンテンポラリーダンスは、流れるようなイメージと考えればよいのでしょうか?

小山:いろんなコンテンポラリーダンスがあるんですが、西洋の踊りとアジアの踊りの特徴だと思うんですけど、西洋の踊りはシーケンス、振付の流れとかでつながり見せるスタイルが多いんですよね。流れる軌跡を見せるというか。日本のコンテンポラリーダンスは、そっちをフォローしている方が多いので、それが主流なんですけど。
アジアの踊りとか郷土芸能って、どちらかというと型を見せたり、振付の流れというよりは型をカッと見せるものが多いから。そういう意味で相反する要素があるのかなと思います。

― 郷土芸能を習って、それを分解して振付にしていくと思うのですが、型の一つ一つに意味を感じることはありますか?

小山:東京でやっているダンサーリハーサルは結構その分解作業をやっていて、なんかわりと勉強会みたいになるんですけど。私が教わってきたことを、自分がそこ(郷土芸能の舞)からそのままの形ではなくて、自分の振付に落とし込んでいる部分ってあるじゃないですか。それは形が違うんだけど、多分何かを共通言語として引っ張ってきているんですよ。
実はそれ、自分でも振付作っている時にわかっていないこととかもあって。で、それをダンサーに渡した時に、逆にダンサーがそれを分解して研究してくれるんですよね。あ、これ形違うけど、あそこのあの体と一緒だ!みたいな笑。で、私がそれを聞いて、ああ!そうだね!ってなる。だからこの振りを持ってきたんだ、って気付くみたいな。
その作業があるから、剣舞を習いに行っていないダンサーも、理解できるというか。そうやって深いところを知れるからすごく面白いですね。かなりライティングですね。

― とても深い話ですね。
今回、田束念仏鎧剣舞で舞を習ったとき、わたしも参加させてもらいましたが、田束念仏鎧剣舞から得たものは何かありましたか?

小山:剣舞って結構自由でいいんだなって、思いました笑。
「こっちゃこ」(劇中の踊り。いくつかの郷土芸能の要素から成り立つ)の振付は、緒方祐香さんという方が石橋鎧剣舞(いしばしよろいけんばい:大船渡市日頃市を拠点として活動)を奉納して、それを元に作られていて。
なので今までの「こっちゃこ」は、石橋鎧剣舞の剣舞なんですね。私たちもそれを元に剣舞そのもののイメージを考えていたので、石橋の良さが現れているんですよね、ストイックさというか。
今回、田束さんに習いに行かせてもらったら、田束さんは結構自由で。剣舞も地域によってこんなに個性がちがうんだなあっていうのが面白くて。
(今まで)東京の洋舞をやっているダンサーが「こっちゃこ」をやるにあたって、形をストイックに練習することはもちろん大事なんですけど。でもそれだけじゃないな、っていうのが、ずっと、わりと引っかかっていたんですけど。
田束さんの自由さというか、自分のスタイルで舞を踊る、各々がかっこいいと思うところが違ってて。で、各々のこだわりをすごく押してこだわって踊ってたんですよね。これでいいのか、これでいいのかもなあ私たちもって思って。それでちょっと振付を変えたりとかしたんですけど。
だから順番的にすごくよかったなと思いました。
ベースでまず、ストイックな剣舞の練習をして、身体の難しさとかも感じた上で、何かそれぞれの剣舞というか、自分の身体にあった剣舞を伝える、でもいいんだよっていうことを知れたというのは、かなり収穫でした。

「こっちゃこ」のワンシーン。
下の写真で、右の長谷川暢が頭につけているのは『ざい』という頭飾り。
実際に田束念仏鎧剣舞で使用されているものを貸していただいた。

― 剣舞も地域によってそんなに違うものなんですね。

小山:田束さんの、お師匠さん達の世代がいて若い世代がいて、っていう、あの空間がよかったですよね。
若い人たちがすごく教えてくれるけど、やっぱり師匠からみると、いやまだまだな、みたいな感じ笑。若い人たちは身体もかなり効くし、派手じゃないですか、踊り方が。すごいかっこいいけど、お師匠さんが扇子の舞を踊ったときに、もう、やっぱり、にじみ出る色気みたいなのが、何十年やっているから出るあの色気みたいなのが目の当たりにできた。どっちも目の当たりにできたっていうのが、かなり面白かったし、郷土芸能の空気感を感じられましたよね。

― 映画の中でお借りした衣装を着て、臨場感が増したというか、まさに剣舞の稽古、という感じがでましたね。



※1 鹿踊り=ししおどり。東北などの郷土芸能。鹿の角をつけた鹿頭をつけ、背中に長いササラをつけて踊る(地域によって違いがあります)。更に、舞手が太鼓を自ら演奏しながら踊る『太鼓踊系』と、舞手は演奏はせず両手に幕を持って踊る『幕踊系』と別れる。
※2 剣舞=けんばい。東北地方の郷土芸能。念仏踊りの一種。腰を低くし、足で地面を擦り、腰から下げている「しか」を蹴りながら踊る。高い跳躍も特徴の一つ。


最終回Part3につづきます。

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