【いのちてんでんこTheMOVIE特集⑦】〜インタビューvol.1〜 振付家:小山柚香 Part3

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いのちてんでんこTheMOVIE制作に関わった方々のインタビューシリーズ、振付家・小山柚香編。
最終回の今回は、三陸地方での滞在について伺いました。
Part1、Part2の記事はこちらからご覧いただけます。あわせて御覧ください。(青)

Part1  https://minnanos.com/2022/02/15/themovie10-1/
Part2  https://minnanos.com/2022/02/16/themovie10-2/


― 三陸と縁が深くなっていたとはいえ、こんなに長期間三陸に滞在したのは初めてですか?

小山:初めてです。

― 三陸の長期滞在で、自分の中で何か得たものはありましたか?

小山:私は海なし県の長野県が出身なので、海のそばに住む人たちの話が新鮮でした。
普通に日常の会話の中で、明日は海がどうとか、海の様子がこうだから、とかって出てくる。皆さんの自然に対する関心のレベルがすごく高いなと。
特に東京に住んでいると、雨が降るか晴れか、気温がどのくらいかとか。雪が降って電車が止まるとかも年に1〜2回ぐらいだし。普段から自然の動きに対して、(自分が)あんまり関心をそんなに持っていないんだなっていうのに気づきましたね
例えばもらったサンマをみて脂が乗っているねとか、野菜持ってきて、いい〇〇だね、こんな大きいのみたことないね、みたいな。そういう食物に関する評価みたいな会話は、スーパーで毎日季節関係なく同じものが並んでいる地域ではあまり出ない。自然の中で、自然の変化の中に暮らしている人たちの会話だなと思いました。

撮影に多く登場している陸前高田の広田湾。
時間や季節によって、様々な表情を見せてくれる。


― よくわかる気がします。三陸の特に沿岸の人々は自然の中に生きている、というか、自然に合わせて生きている、という感じがよくします。
今日も津波警報が出ていたんですが(インタビューは2022年1月16日)、テレビやラジオで警戒しつつも、他の地方で警報が解かれていくとともに、道に車が少しずつ走り出したりしていて。情報を確認しながらも自分たちの目で見て判断できる力がある。沿岸で暮らす人々は特に、自然の中に生きる感覚的なものを培っていると思いました。

小山:そうなんです。先日の取材撮影の時に、田束念仏鎧剣舞(たつがねねんぶつよろいけんばい)の会長さんが、震災がおきた日に一人で一晩過ごしたっていってたじゃないですか。

(※映画撮影では、証言取材、という形で地域の方々に出演していただきました。田束念仏鎧剣舞の千田会長にも出演いただき、貴重なお話を聞かせていただきました。)

あれは結構衝撃でした。しかもご自宅じゃなく、近くの小屋に。しかもまだ寒い三月に。すごいですね。
なんだろう…、そもそもの生きる力が強いのではないだろうか東北の人は。自然といつも近いから、どうすればいいかわかっているじゃないですか。変に怯え過ぎないし。どうやって自然と一緒に生きていったらいいかわかっているから。
敵じゃないっていう、一緒に生きているし、その恵をもらっているから。
前に聞いたことがあるんですが、沿岸地域では『津波がきたら高台へ、津波が引いたら海に行け』、という言い伝えのような言葉があると聞いたことがあって。
津波がくることで土壌が肥える。津波自体は被害もあって悲しいことだけど、でも、それによって自然というものは回っていて、それに生かされていることもあって、ということを聞きました。
東京で、東北の東日本大震災の被害を見ていると、やっぱり津波怖い、東京にきたらどうしよう、っていうことばかりになってしまうけど。実際に東京にいても海や自然の恩恵って全然感じないし。
でも、こちらの人は、本当に自然と共に生きているっていう感覚。それも防災の一つなのではないかなって、思いました。

― 都市は都市型の防災を考えていかなきゃならないということでしょうか。
最後に、今回の見所と撮影で心に残ったことをお聞かせください。

柚:まず、心に残ったことは、剣舞を一緒にカンパニーのメンバーと習うことができたことが、かなり心に残っていて。
初めてだったんですね、複数人で岩手に行って郷土芸能をしっかり教わるていうことが。その時間を経て、さらに撮影で同じ釜の飯を食べ、同じところに寝泊まりして。本当に同じ地域の仲間みたいな連体感を感じるなと思って、それが、心に残っています。
何気なくみんなで食べたご飯とか、あと、地域の人が差し入れを持ってきてくれたりとか。近所のおばちゃんがくれたものをみんなで食べる、みたいなのとか。いのちてんでんこという地域芸能をやっている、みたいな気持ちになったのが、すごく嬉しかったなと思います。

後、見所ですが、舞台だとサイドストーリーみたいなことって、あまり描けないじゃないですが。わかりにくくなっちゃうし。だけど、映画は主役やそれ以外の人たちの細かい心情やエピソードが盛り込まれたと思うんですよね。役所として名前はないけど、(ストーリー設定の)地域の中ではこのキャラクターというのが、今回初めてはっきりした人とかもいて。


この人は末っ子の役とか、この人はちょっとリーダーぽくって、新沼さんのことをリスペクトしてて、大(主人公:佐々木大地のニックネーム)にいつも、ちょっかい出しててとか。コミュニティの中での役割みたいなことが撮影中に自然にできていたので。映画をみて、感じてもらえるんじゃないかなと思っています。
何回も見て欲しいですね。

一回目は主役の目線でのストーリーを楽しんでもらって。そこにどっぷり浸るとは思うんですけど。
実は結構いろんなキャラのたった人たちが登場しているので。その人たちも一人一人その地域にいきている芸能をやっている人たちだから。同じ芸能でつながっている人たちだから。そういう部分も見ていただけたら嬉しいなと思います。


いのちてんでんこTheMOVIE
2022年2月18日(金)
Vimeoにて公開開始

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