それでも、祭りは残っていた。
新米市役所職員の佐々木大地は、自分の非力さに苦悩し、
幼なじみの雪や、心酔する先輩に襲い掛かる出来事に、
うつむき、心折れそうになりながらも、
自分のできること、すべきことを見つけ、ゆっくりと歩み始める。
彼に前を向かせたのは、小さな集落だからこその繋がり。
都会にいれば、疎ましくさえ感じられるかもしれない、
親密な距離感で生きている人々の、愛おしいまでの繋がりに支えられ、
幼なじみや先輩の出来事も糧として、大地は少しずつ成長を遂げる。
そして自分の中にも、「生きる力」として、
この土地に根付いた文化や芸能が流れていることに目覚めるのだ。
やがて、大地は気付く。
この集落の人々が、あれほど辛い目に遭わされた海を恨むことなく、
海と共に生きていこうとする姿に。
その思いを、次の世代に伝えていこうとする姿に。
そして、約束の場所で、祭りが始まる。