「劇団短距離男道ミサイル 本田椋ができるまで」
皆様、こんにちは。みんなのしるし 、都甲です。
今日はミュージカル「いのちのかたりつぎ」のキャスト、「ホカイビト」役の本田椋さんにインタビューをしてみます。
個性豊かな「シシ」のキャストの素顔を知って、「シシ」の上演を楽しみにしてくださいね!
本田と演劇との出会い
ー今日はよろしくお願いします。
本田
よろしくお願いします。
ー早速ですが、お芝居を始められたきっかけは?
本田
あ、そういうところからでしたか!
ええと、高校3年生の時にテレビを見ていたら、NHKの「劇場への招待」っていう番組があって、それにハマってしまって。
それまでの舞台っていうもののイメージと全然違う「なんじゃこれは!?」みたいな衝撃と共に、「大学生になったら、舞台をやってみなければ…」という思いに動かされて、東北大学の入学と同時に学友会演劇部に入りました。
そこで、のちに劇団「短距離男道ミサイル」(以下、ミサイル)を一緒にやることになる澤野さんとも出会います。
でも、特別に仲が良かったとかではなくて。
学友会演劇部は、当時部員が60人くらいいて、常に複数の公演の企画が走っているような状況でした。
それぞれ自分で参加する企画を決めて活動していく……って感じでしたね。
東日本大震災と「ミサイル」誕生
ーミサイルって震災を契機にできたって聞いたんですが、どういう経緯だったんでしょうか?
本田
はい。2011年3月の東日本大震災の時は、僕はまだ学生でした。
震災後しばらくは学校とかもなくて、そんな中4月末に、C.T.T. sendai の特別支演会がまちなかのモダンバレエのスタジオで行われて、そこにミサイルが出たんです。
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※都甲注
C.T.T. sendaiとは、「Contemporary Theater Training=「現代演劇の訓練」として、仙台市内で月に1回のペースでワークショップをしたり、トレーニングの成果を発表する場としての「試演会」を行なっている団体のことです。http://cttsendai.jugem.jp/?eid=15
当時、仙台市内の文化施設はどこも休館中で、多くの劇団が予定していた公演を中止したり延期したりしていました。
そんな中で仙台市内で活動する舞台人たちが集まり、お互いを励まし合う場として、もともと予定していた試演会の形を変えて「特別支演会」が開催されました。
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本田
ミサイルは、その時のために集まったユニットで、澤野さんをはじめとする仙台の若手の俳優陣が集まっていました。
演目は「こんな時だから、明るいものをやろう」って言って。
でも僕、1回目は出てないんですよね!
先輩も出てることだしって、お客さんで行ったんです(笑)
僕はその年の年末に行われた2回目の公演から、ミサイルに加わることになりました。
劇団化と「飯を食っていく」
ミサイルが劇団になったのが、2013年だったかな。
2015年くらいからは「芝居で飯を食っていこう」という方針を決めて、活動をするようになっていきました。
具体的にやったのは東北ツアーですかね。
キャンピングカーに舞台セットと役者をパンパンに詰めて、東北6県を21都市を回ったんですよ。
「東北のことをもっと知らなきゃ。東北のいろんな人に会わなきゃ」って。
ツアーは、まあ、サイアクです(笑)
キャンピングカー自体は結構大きい、最大6人が寝泊まりできる車だったんですけど、揺れるし、そこに機材とセット詰めて、5人寝泊まりするっていう…。
揺れる、寒い、狭い。
もう「これは修行だ」って思いこむしかない。
その時の経験が辛すぎたので、2回目にもう一回東北ツアーをやった時は1回目で出会った人たちのご厚意に甘えて、ご厄介になったりしました。
お布団に寝て体を休めれるって、素晴らしいことですよ(笑)
ミサイル演出担当へ
2018年に2回目の東北ツアー『 走れタカシ ~僕が福島まで走った理由(わけ)~ 』が終わって、澤野さんがミサイルを抜けたことで、僕が作品の演出を担当することになりました。
そういう立場になって、初めて思うのは、
「演出って…大変だなあ!」
ということです。
それまでは、イチ役者として、「よきクルー」であれば良かった。
でも演出となると、作品自体のことももちろんですが、その外側のことまで含め全体を見て、スタッフさんともやり取りしたりとか…
本当に日々、勉強です。
自分より強いヤツに会いに行く
ーちなみに、どういう舞台がお好きですか?
本田
そうですね…。見る方もやる方も、あんまり選り好みはしないかなあ。
男道スタイル(劇団短距離男道ミサイルの作風)も、もちろん好きだしダンスとか身体表現、会話劇も好きです。
出演の時に考えるのは、「この人と力を合わせたいな」と思える人とやりたい、ってことですかね。
その作品に僕が出ることで僕自身が成長して、観てる人たちにとっても、それが喜ばしい。
そういう作品だと「やりたいな」って思います。
僕は作品を通して、新しい世界を見に行きたいんです。
男子っぽい言い方ですけど「今の自分より強いヤツに会いに行きたい、というか(笑)」
やったことのないことができる場所は、ありがたいですね。
ミュージカル初挑戦
なので、今回僕はミュージカル初挑戦なんですけど、すごく刺激をもらっています。
でも僕は今まで自分の歌にコンプレックスがあったので…、すごく戸惑いも感じてます。
今まで、歌と正面から向き合ってきたことがなかったので、音程が合ってないことを気にしちゃったり。
でも稽古をしているうちに、他のキャストの方が歌を自分なりに表現しているのを見て、「ちゃんと歌わなきゃ…」っていうところから、少しずつ自由になってきました。
ー作品の中身自体についてはどうでしょうか?
本田
今まで郷土芸能とか、地元の文化を学ぶ機会がなかったので、すごく面白く感じています。
東北の芸能がとても豊かで、そしてそれがずっと受け継がれてきているものだ、ということがわかって、今同じ東北で表現をしているものとして、リスペクトの気持ちが湧いてきています。
こういうのって、東京に出て芝居していたら、出会えていなかったんじゃないかな。
これからもっと、地域の芸能を学んだり、触れたりする機会を増やしていきたいですね。
ホカイビト 、という役
ー本田さん演じるホカイビト は、鹿踊を主人公である浜の男、嘉兵衛に伝えたという伝説のある芸能の伝達者として描かれています。
本田
ホカイビト という役は自分に似ているな、と思うところがたくさんあります。
フラフラといろんなところに芸を求めて行ってしまうところとか、
「自分の身体さえあればいい」みたいに考えているところとか(笑)
僕自身、急に舞台出演のために大阪に行ったりとか、東京での稽古期間中に、ずっと演出家の家に居候したり。
本当に、身一つでどこでも行っちゃうんですよ。
ホカイビト も西の方にある都から遠い東北に、芸を求めてやってきていて…「似てるなあ」って。
ただ、ホカイビト っていうのはちょっとクセモノ感があるというか、一筋縄ではいかないところもあります。
一方で僕はバカ正直といいますか、どちらかというと不器用なので、舞台の上でそれが出ちゃうんですよね。
なので、残りの稽古期間で、どれくらいホカイビト との距離をつかめるか、頑張っていきたいなあと思います。
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利賀演劇人コンクール2019で「存在感ある演技」が評価され、俳優として史上二人目となる奨励賞を受賞した本田さん。
「東北でやっていても全国で通用する、ということが証明できて嬉しかった」
と言います。
本田さんと一緒に舞台を作れることが、私たちも嬉しいです!!